同じ仕事には同じ給与を払うべき、という「同一労働同一賃金」の考え方について、政府がガイドライン案を新たに示しています。
はじめに
近年、働き方改革関連法の施行から数年が経過し、正規社員と非正規社員の不合理な待遇差をなくすことを目的とした「同一労働同一賃金」は、企業の人事制度に大きな影響を与えてきました。政府は制度の実効性をさらに高めるべく、ガイドラインの改正案を公表しました。以下、改正案のポイントについて整理します。(なお、本稿執筆時点(2025年12月15日)では、ガイドラインの見直しは検討段階であり決定事項ではありません。)

改正案の背景と目的
現行制度では、職務内容や責任の程度、配置の変更範囲(転勤対象となるか)などを総合的に比較し、正規と非正規の待遇差が「不合理」であるか否かを判断するとされています。しかし、実際の運用では、企業側の説明が十分ではない場合、待遇差の根拠が曖昧な場合などが問題視されてきました。また、同一労働同一賃金に関する最高裁判決が相次いで出されたことで、より具体的な判断基準が示されてきました。今回の改正案は、これらの判例を踏まえた内容となっています。
改正案の主なポイント
1.待遇差の説明義務の明確化・強化
パートタイム・有期雇用労働法では、非正規社員から求めがあった場合に待遇差の理由を説明する義務が定められています。今回のガイドライン改正案では、この説明義務の運用について、より具体的な指針が示されています。
例えば、「単に『雇用形態が違うから』といった主観的・抽象的な説明では不十分で、客観的・具体的な実態に基づく説明が必要」などの踏み込んだ表現がみられます。「労使の話し合いや議論による合意形成が望ましい」などの表現もあります。これらの指針から外れたものが説明不十分=不合理な待遇差と判断される可能性が伺えます。

2.手当・教育訓練・福利厚生の取扱の明確化
今回の改正案では、これまでガイドラインに明記されていなかった以下の項目が新たに追加されました。

特に退職手当については、職務内容や配置の変更範囲が正社員と同一であり、かつ長期間勤務している非正規社員に対して、不合理な差を設けることが難しくなる可能性があります。これは多くの企業に影響を与える重要な変更点です。
3.職務評価の導入促進
同一労働同一賃金の根幹となるのは、職務内容の適切な把握と評価です。改正案では、職務内容の適切な把握と評価の重要性が強調されています。ただし、本格的な職務評価制度の導入は、中小企業にとってハードルが高いのも事実です。まずは、正規社員と非正規社員の職務内容の棚卸しやタスクの洗い出しから始め、両者の違いを整理することをお勧めします。
特に、非正規社員の職務内容を精緻に把握し、正社員との違いを整理することで、待遇差の合理性を説明しやすくなるでしょう。
参考
厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン 見直し(案)」(2025年11月21日公表)
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001598238.pdf