社会経済状況の変化や制度上の男女差を解消していくため、20代から50代に死別した子のない配偶者に対する遺族厚生年金の見直しが検討されています。
はじめに
現行の遺族年金制度は、「夫が働き、専業主婦等の妻を扶養する」という家庭を想定しており、性別により受給要件・内容に差が設けられていますが、この度時代の変化に合わせて遺族年金制度の見直しが検討されています。現行制度と見直しの概要について解説します。
現行の遺族年金制度
現行の遺族年金制度は、大きく「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」に分かれます。遺族基礎年金は国民年金の被保険者が死亡したときに子のある配偶者または子(子には年齢等制限あり)に支給され、遺族厚生年金は厚生年金被保険者等が死亡したときに子のある妻または子、子のない妻、孫、並びに一定の要件を満たす夫または家族に支給されます。
遺族基礎年金が「子のある配偶者」を対象とした年金給付であることと比較して、遺族厚生年金は「夫は配偶者が亡くなったとしても自らの就労により生計を立てることができる」という考えの下で、夫は55歳以上でないと支給されません。逆に、「妻は独力で生計を立てることが難しい」という考えにより、子のない妻に対しても支給される※という制度上の男女差が設けられています。
※注)子のない夫も妻の死亡当時55歳以上であれば受給権がある
具体的には、子のいない場合の遺族厚生年金について、現行制度では夫婦で以下のような違いがあります。
見直しの方向性
今回見直しの対象とされるのは子どもがない世帯に対する遺族厚生年金です。20代から50代に死別した子のない配偶者に対する遺族厚生年金を、夫婦どちらも5年間の有期給付とすることが検討されています。
具体的には、50代未満の夫を「5年間有期給付」の対象としつつ、妻が30歳未満に死別した場合の「5年間有期給付」の対象年齢を下図のように段階的に引上げを徐々に行うことが見込まれています。
その他の見直し案
【 死亡時分割制度 】
5年有期給付化により受給額が減少することをケアするため、現行制度の離婚分割を参考に、死亡者との婚姻期間中の厚年期間に係る標準報酬等を分割する死亡時分割(仮称)の創設が検討されています。
【 収入要件の廃止 】
有期給付の遺族厚生年金の受給対象者を拡大するため、現行制度における生計維持要件のうち収入要件の廃止が検討されています。
【 有期給付加算 】
現行制度の遺族厚生年金額(死亡した被保険者の老齢厚生年金の4分の3に相当する額)よりも金額を充実させるための有期給付加算(仮称)の創設が検討されています。