労働基準監督署調査の際に必ず確認されることの一つに年次有給休暇がありますが、パート・アルバイトに対して付与すべき有給休暇について解説します。
はじめに
働き方改革の流れの中で、残業など労働時間以外に年次有給休暇についても注目されるようになりましたが、パート・アルバイトに対する有休はまだ整備されていない事業所も少なくありません。近年、労働基準監督署調査の中で有休についての指摘が多くなっているため、この記事ではパート等に対する年次有給休暇について解説をします。
比例付与
パート・アルバイトに対しても当然に年次有給休暇を与えなければなりませんが、その付与日数は所定労働日数に応じて少なくできます。所定労働日数ごとに有休日数を変える仕組みを「比例付与」といいます。
通常の労働者と比べた場合の付与日数については以下のとおりです。
【年次有給休暇比例付与一覧表※】
※比例付与の対象となるのは、週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の場合
また、週以外の期間によって労働日数が定められている場合、以下のとおり年間の所定労働日数をもとに区分する。
有給休暇を取得した日の賃金計算
月給の労働者の場合、年次有給休暇を取得した時には「月次の固定給を減額しない」という計算で済みますが、時間給や日給で支給をすることの多いパート・アルバイトについてはその計算に迷うことがあります。時給制のパート・アルバイトが有給休暇を取得した日の賃金計算の選択肢としては以下の3種類があります。
【1. 休暇を取得した日の所定労働時間×時給】
まずはこの計算方法が一般的でしょう。労働条件通知書やシフトなどで決まっているその労働者のその日の所定労働時間分の賃金計算をします。
【2. 社会保険の標準報酬日額】
労使協定を締結することにより、有給休暇1日分の計算に社会保険の標準報酬日額を用いることができます。標準報酬日額とは、標準報酬月額を30で割った額を指します。
【3. 平均賃金】※一番煩雑。
上記1、2以外に、労働基準法上の平均賃金を用いることもできます。平均賃金の計算式は次の①②の高い方を採用します。
① 有休取得をした賃金計算期間の前3ヶ月の総賃金÷同3ヶ月の総暦日数
② 有休取得をした賃金計算期間の前3ヶ月の総賃金÷同3ヶ月の総労働日数×60%
なお、この平均賃金は他の計算に比べて金額が小さくなることが多いですが、有給休暇の賃金を抑える目的でパート等だけ平均賃金計算を用いることは公平性の観点から問題となる可能性があります。