世間で「リスキリング」という言葉が話題になっています。用語の解説をするとともに関連する助成金や今後の企業経営への影響について説明します。
リスキリングとは
リスキリング(re-skilling)とは「新しい職業に就くために、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得すること(させること)」をいいます。
新型コロナウイルス騒動以降、社会の変化により今までの技術(スキル)が役に立たなくなることに備えて就労者が自ら学び直す(あるいは企業が従業員に研修を受けさせる)場面で使われています。
特に社会のデジタル化に向けたDX人材育成の場面で使われることが多いようです。
例えばAmazonでは、倉庫作業員などの非技術系人材を技術職に移行させる「アマゾン・テクニカル・アカデミー」を社内研修プログラムとして実施していますが、これは、「今後倉庫内で人が働く必要がますます無くなっていく」ことを示唆しています。
リスキリングを働く人の目線、雇う側の目線でわかりやすく説明するならば、以下のように表現できるでしょう。
就労者の目線 | 社会の変化により自分の技術や経験が陳腐化した時に減給となったり職を失ったりしないように新しいスキルを身につけること |
雇う側の目線 | 社会の変化により新たに必要となる技術(あるいは必要でなくなる技術)について見極め、研修実施により人材価値を高めていくこと |
助成金制度
リスキリングに関連した助成金として以下のものがあります。デジタル分野やSDGs方面のジャンルに対する研修に対する助成制度が今後も充実していくものと予想されます。
【人材開発支援助成金】
事業展開等リスキリング支援コースでは、企業の持続的発展のため、新製品の製造や新サービスの提供等により新たな分野に展開する、またはデジタル・グリーンといった成長分野の技術を取り入れ業務の効率化等を図るための事業展開に伴う人材育成費用の一部が助成されます。
人への投資促進コースでは、デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成されます。
日本の解雇規制との関係
パンデミックによって、消費、物流、教育、労働環境その他様々な場面で社会のあり方が変わってきました。今回のコロナ騒動でも例えば旅行業や飲食業など一部の業種は大きな影響を受けましたが、日本の強い解雇規制(と雇用調整助成金)により業績の落ち込んだ企業においても雇用流動化が阻害されています。
この解雇規制があるかぎり、リスキリングは「自社の社員の雇用を維持しつつ(解雇せず)、何とか新しい時代に対応できるスキルを身につけさせるよう再教育する」という文脈でしか語られづらいものになりますが、本来のリスキリングは「社会全体として時代に合わせた再教育をし、労働力の流動性を高めて労働需給・雇用の全体を最適化していく」というもっと大きな枠組みで対応すべき課題である、という見方もあります。
企業がいくらリスキリングの号令を掛けたとしても、それをしないと大きな不利益になる状況でなければ労働者の学習意欲は喚起されないかもしれません。