はじめに
アメリカがなぜ大国とされるのか?人口も多く経済力の高い中国が、なぜ国内の問題で多くの予算を使わねばならないのか?日本は大国といえるのか?などという疑問は大人でもハッキリと答えるのが難しいものです。本書は中高生の兄妹と「カイゾク」と呼ばれるアンティークショップのオーナーが登場人物の小説として描かれており、分かりやすい事例をもとに地政学を用いて疑問を紐解く内容になっています。
なぜ海が大事なのか?
地政学という言葉はあまり耳慣れしませんが、「地理的な位置関係が国際政治にどのような影響を及ぼすのか」ということについて考える学問です。
たとえば、航空や線路車両がいかに発展しようが、地政学において海が最も重要だと「カイゾク」は説明します。その理由はいくつかあり下記のとおりです。
- 貿易のほとんどは海上輸送だから。
- 日本においては8%を占める割合
- 核ミサイルの配備は、搭載する原子力潜水艦が隠れられる深い海が必要だから
- 海底に張ったケーブルでインターネットを支えているから。
- 最も多く所有しているのはアメリカ、2位はイギリス
そして、海の重要性を理解した上で、なぜアメリカが力を持っているかの説明をカイゾクは兄妹にします。
- 世界各地に基地を有し、海軍を配備している
- それにより、世界の船の行き来を仕切る国になった
- 結果として世界の貿易の 8 割で使われる通貨はドル
誰でも知っている「アメリカは大国」という常識についてその理由を地政学の事例で解説されているため、理解が進み一気に物語に引き込まれてしまいます。その後、他国からの干渉を受けない水深の深い海を求める国の思惑や国土が広く経済力がある国とそこに暮らす少数民族の問題などが話され、話題はアフリカになります。
絶対に豊かにならない国々
アフリカは地球上の陸地の2割を占めており、豊富な資源があるのになかなか豊かになりません。この理由を紐解いていくと次のような流れになります。
- 無理やり国境線を引かれた歴史的背景がある
- それにより国民としての意識がなかなか醸成されない
- 結果、政治家もお金を広く国民のために使わずに、自分の民族の身内だけを優先するようになりやすい
併せてアフリカは民族間の問題があるために、ある民族の政治家が選挙に勝つと負けた民族の立場を無視し、逆に負けた方もその結果を受け入れない態度をとるようになります。結局、国がまとまらず、武力で言うことをきかせようとするようになります。これがアフリカ国内の戦争が絶えない理由なのです。
この書籍で一貫して主張いることは知った気にならず、知り続けることで、常に変化を捉えていくことが大切だということです。これこそが長くて険しい「平和」への道のりの一歩だと結論づけています。
この筆者は新聞記者として政治部、経済部、国際部、モスクワ特派員など20年以上のキャリアを積み、世界40カ国以上で政治経済から文化に至るまで取材した国際政治記者です。深い知見を小中学生でも分かる文章で説明し、「地政学」という分野で今までとは違った世界の見方ができるようになります。学生だけではなく、社会人にもおすすめしたい一冊です。