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《2105》人新世の「資本論」(集英社)

単行本:384ページ
出 版:集英社
価 格:1020円(税別)

はじめに

「人新世」とは、人類の経済活動が地球を破壊する、つまり環境危機の時代を指す言葉です。経済活動を縮小し、資本主義を投げ捨てたとして、果たしてそこに繁栄の可能性は残されているのでしょうか。

 

SDGsは「大衆のアヘン」

昨今、環境問題を語る上でよく耳にする「SDGs(持続可能な開発目標)」について、筆者は以下のように捉えています。

かつて、マルクスは、資本主義の辛い現実が引き起こす苦悩を和らげる「宗教」を「大衆のアヘン」だと批判した。SDGsはまさに現代版「大衆のアヘン」である。

SDGsを実行するだけでは、地球の環境を変えていくことはできないということが実情として存在しています。そんな中、盲目的にSDGsに取り組むことは、どうしようもない現実の危機から目を逸らす免罪符にもなりかねないのです。

地球の気候が大きく変動しても、一部の富裕層はそれまでと変わらない生活を送ることができるかもしれません。しかし、富裕層ではない人々は過酷な状況の中でどう生きていくかを模索しなければならないのです。そんな事態を防ぐために「人任せ」にするのではなく、1人ひとりが環境問題に対する対策行動を知っておかなければいけません。

 

ポイント・オブ・ノーリターン

100年に1度といわれていたような異常な気候や災害が、近年では世界各地で相次いでいます。これは、すでに環境危機は始まっているということを意味しているのです。

長い間、環境問題が取り上げられているため「環境危機」といわれても、いまいちピンとこない場合もあるかと思います。

しかし、この異常な気候や災害の連続は、急激な変化が起きて以前の状態に戻れなくなる地点=ポイント・オブ・ノーリターンがいつ発生してもおかしくない予兆なのです。

もし仮に、気温が2℃上昇すればサンゴは死滅し、漁業にも大きな被害が出ます。各地で発生する台風もその規模・確率を増していくでしょう。たった2℃の上昇でさえ、甚大な被害に直結するのです。

 

脱成長コミュニズム

筆者が提唱する概念に「脱成長コミュニズム」というものがあります。害悪をもたらす成長や効率化を目指すのではなく、地球の特定の限界の中で生きていく社会を作るという考え方によって成り立っています。

しかし、常に膨張しつづけていく性質をもつ資本主義と脱成長は両立しえないものでもあります。そこで重要になるのが、資源を独占せずに社会全体で共有し、管理するという発想です。このような資源・富のことを「コモン」と呼び、コモンの領域を広げていくことで、脱成長コミュニズムが発展していくというのが筆者の考えです。

資本主義が拡大していけばいくほど、貧富の差は大きくなり、環境に対するダメージも増えていきます。未来の地球環境が深刻な状態になることは言うまでもありませんし、貧富の差のひらきによって、止められない気候変動に適応できる人々が少なくなっていくことにもなります。資本主義から脱却し、コモンを活用する脱成長コミュニズムこそがこれからの時代には必要なのです。

すぐそこまで迫っている、取り返しのつかない環境危機を乗り越えていくために必要なことが学べるおすすめの1冊です。

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