単行本:288ページ
出 版:日経BP
価 格:1,600円(税抜)
はじめに
職人向けの低価格で高機能な衣類販売店として有名になったワークマンは、今ではオシャレを追求する若者にも愛される存在になりました。コロナ禍でも業績の右肩上がりを実現したワークマンの革命の秘密を覗いてみましょう。
ワークマンの変貌
2019年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられ、多くの企業が増税に伴う値上げを実施しました。しかし、そんな中でワークマンは「価格据え置き」を宣言、実質的な値下げに舵を切ったのです。
そんな「消費者目線」の決断は消費税関連の事柄に限定されません。2018年9月には、新業態となるワークマンプラスを出店。今までとは全く異なる馴染みやすい店構えとなったこのワークマンプラスは、既存の商品からカジュアルウェアだけを切り取って販売するという方向性で立ち上げられました。開店当時、ワークマンの迷走や悪い意味での変化を恐れる声も挙がりましたが、実際には商品のコンセプトは変えずに売り方を工夫するという、長年のファンを裏切らない見事な戦略だったと言えるでしょう。
バイク乗りの来訪
ワークマンが、職人だけではなく一般の顧客を意識するようになったきっかけが、とあるバイク乗りグループの来店だったといいます。彼らが求めていたのは、バイクで走行中に雨風を凌ぐためのレインウェア。
職人向けだったはずの製品が、ネット上ではワークマンの知らないうちにバイカー御用達のアイテムとして話題になっていたのです。その事実に気づいてから、ワークマンはネットの声にとことん耳を傾けるようになりました。
職人にとって安心して着用できる高機能製品でありながら、バイクや釣りといった趣味にとっても重宝する必須装備。これだけ多方面に価値のある商品でありながら、原価率65%を目指した価格設定のままであることも人気の秘訣でしょう。多くの意見を取り入れて誕生した「最強のレインスーツ」でさえ、税別4900円という手に取りやすさを実現しています。
ネットの海を全て視る
ワークマンではネットを使った販促に力を入れています。これだけを聞くと「どこの企業でもやっていること」と思うかも知れませんが、ワークマンの取り組み方は一味違います。
SNSなどでワークマンに関する情報を検索、いわゆるエゴサーチを行い、徹底的に利用者の声を拾い上げるのです。これは全て手動と目視で行われ、発見した利用者の中からアンバサダーになれる人材に直接声をかけているそうです。アンバサダーは商品開発にも参画してもらい、新たなニーズに応えるための創意工夫を行っているのです。
自社で開発した製品が、当初想定していたものとは異なる方法で利用されていたことをきっかけに「販促する範囲を見誤っているのではないか」という考えから生まれたアプローチの1つです。何度も繰り返しているように、本来ワークマンの製品は職人向けです。ところが、実際にSNSなどを調べると職人とはかけ離れた立場の人が、多様な使い方をしていることがよく分かります。
新規顧客も昔ながらのファンも落胆させずに、次々と新しい売り方を実現していくワークマンの戦略は、決して衣類販売の業界内でしか通用しないノウハウではありません。様々な業種の方にオススメできる一冊です。